多国籍企業研究第11号
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34ラグジュアリー消費における知覚価値と倹約志向の相互作用      ― ラグジュアリー・ブランド品を所有する日本人を対象に ― 李  炅泰データ収集:調査はインターネット調査会社の協力を得て2017年1月に行われた。第1段階として、直近3年以内に高級ファッション・ブランド品を購入した所有者を抽出するスクリーニング調査を行った4。期間を限定したのは、標本間で購買と使用の時期が大幅にずれることで生じ得るバイアスを防ぐためである。スクリーニングは性別と年齢のバランスを考慮して行われ、400名から有効回答を得た。次に、第2段階となる本調査を実施し、高級ブランド品に関する知覚価値、満足、意図、倹約、回答者属性などを調べた。また、回答者全員の国籍が日本であることを確認した。標本属性は図表4の通りである5。 4.分析と結果4.1 構成概念のプロパティ探索的因子分析:因果モデルを構成するLB知覚価値・満足・意図のデータ(n=400)を投入し、最尤法・プロマックス回転による探索的因子分析にかけた。不十分・不安定な因子負荷を示した項目を除外しながら複数回かけた結果、品質・ヘドニズム・満足・意図が各々1つの因子に収束した(付録)。しかし、自己拡張・顕示性・排他性については、Le Monkhouse et al.(2012)の通りに分かれず、1つの因子にまとまった。その中身は自己拡張5項目・顕示性3項目・排他性2項目で、Vigneron & Johnson(1999)の対人的効果に関わる価値次元で構成されていた。自分を目立たせたり社会的地位を示したりする自己象徴的な価値ということができる。そこで、社会・対人的な価値を表す「象徴的価値」と命名した。なお、仮説構築時の呼称に合わせて、品質の因子名を「実用的価値」、ヘドニズムの因子名を「感情的価値」に改めた。Cronbachのαは、実用的価値0.84(M=4.44, SD=0.78)、感情的価値0.93(M=4.37, SD=0.95)、象徴的価値0.94(M=3.69, SD=0.94)、満足0.89(M=4.22, SD=0.94)、意図0.88(M=3.74, SD=1.07)であった。メジャーメント・モデルの分析:Anderson & Gerbeing(1998)とHair et al.(2010)に従って、メジャーメント・モデルと構造モデルの2ステップ・アプローチで分析を進めた。最尤法による確認的因子分析を行ったところ、適合度はχ2 = 744.47, df = 263, p< .001, χ2/df = 2.83, CFI = .94, RMSEA = .068を示し、観測変数が12~30個の場合に望ましいとされるCFI .92以上・RMSEA .07以下(Hair et al., 2010)を満たした。標準化推定値はすべての項目で収束妥当性の基本要件とされる0.5以上(Anderson & Gerbeing, 1998; Hair et al., 2010)であった(付録)。さらに、AVE(Average Variance Extracted)も図表2の通りすべての因子で0.5以上であり、収束妥当性が認められた(Fornell & Larcker, 1981)。4 直近3年は、脚注2の「MyVoice」調査を参考にした。5 標本のデモグラフィック要因(性別、年齢、年収、学歴)をダミー変数化し、満足と意図を従属変数とする重回帰分析にかけたところ、次の結果が得られた。満足には年齢だけが有意な影響を与え(β = -0.16, t = -3.15, p<.05, R2 = 0.04, 調整済みR2 = 0.03)、若い所有者ほどLBへの満足度が高かった。一方、意図には年齢(β = -0.17, t = -3.34, p<.05)と年収(β = 0.14, t = 2.40, p<.05)が有意に影響し(R2 = 0.04, 調整済みR2 = 0.03)、年齢の若い人と年収の高い人が高い意図を持つ傾向がみられた。ただ、いずれも決定係数は低い値であった。

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