多国籍企業研究第11号
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36ラグジュアリー消費における知覚価値と倹約志向の相互作用      ― ラグジュアリー・ブランド品を所有する日本人を対象に ― 李  炅泰0.71であった。因子分析結果と記述統計量を図表3に示す。倹約の2因子構造は、単一次元性を主張したLastovicka et al.(1999)とは異なるものの、Goldsmith et al.(2014)や玉置(2014)の分析と類似している。続いて、クラスター分析を用いて倹約志向の高い標本と低い標本に群分けした。倹約2因子の中央値は各々4.00と4.25であった。回答者の中には2つの因子でいずれも中央値を示した人が6名いたため、群間区別を明確にする目的で分析から除外した(Hair et al., 2010; Todd & Lawson, 2003)。その後、残りの394サンプルに対してWard法による階層クラスター分析を行い、2つのクラスターを得た。第1クラスターは168名(43%)、第2クラスターは226名(57%)で構成されていた。両群の倹約水準に明らかな差異があるかを確認するため、2つのクラスターを独立変数、「カネ」と「モノ」を従属変数とする分散分析を実施した。その結果、「カネ」・「モノ」ともに高群(第1クラスター)と低群(第2クラスター)の間で有意差がみられた(カネ:F(1,392) = 457.23, p<.001、モノ:F(1,392) = 359.49, p<.001)。平均値と標準偏差は、カネの倹約に対して、高群が4.82(0.60)・低群が3.51(0.60)、モノの倹約に対して、高群が4.96(0.53)・低群が3.90(0.55)であった。図表4 標本の属性全体(n=400)倹約高群(n=168)倹約低群(n=226)性別男50.0%53.6%46.9%女50.0%46.4%53.1%年齢20代以下20.0%29.8%13.3%30代20.0%17.8%21.7%40代20.0%17.9%21.6%50代20.0%22.0%17.7%60代以上20.0%12.5%25.7%平均年齢44.9歳41.6歳47.2歳年収500万円未満63.8%61.9%65.0%500万円以上36.2%38.1%35.0%学歴高校25.3%21.4%28.3%大学67.5%68.5%66.4%大学院7.3%10.1%5.3%メジャーメントの不変性:多母集団同時分析に先立ち、構成概念が群間で齟齬なく理解・測定されたかを確かめるため、メジャーメントの不変性テスト(measurement invariance test)を行った(Steenkamp & Baumgartner, 1998)。メジャーメントの不変性は構造方程式モデルで群間比較を行うための前提条件で、少なくとも部分測定不変性(partial metric invariance)が支持される必要がある(Hair et al., 2010)。まず、配置不変モデル(configural invariance)の適合度は良好であった(χ2 = 1103.76, df = 526, p< .001, χ2/df = 2.098, CFI = .922, RMSEA = .053)。続いて、すべての因子に等値

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